失礼ってホント?「つまらないものですが」の持つ本当の意味

 

最近は誰かに物を贈る時に

「つまらない物ですが…」

と言って渡すのは失礼なことです。

と解説されているのをよく目にかけます。

 

ボクもそれを信じて、この言葉はなるべく

使わないようにしていました。

 

ある本と出会うまでは。

 

 

それは旧5千円札にも描かれていた

新渡戸稲造さんの書いた『武士道』という本。

その中にとても興味深いフレーズがありました。

 

アメリカ留学の経験もあった新渡戸さんが感じた

日本とアメリカの贈り物をする際の違いについて

このように書かれています。

 


 

アメリカでは贈り物をする時、

 

「この品物は素晴らしいものです。

これがよい品物でないとすると、

あなたに差し上げようなどとは

思いもよりません。

 

よい品物でない物を差し上げることは

あなたを侮辱することになります。」

 

 

対して日本人の倫理はこうである。

 

「あなたは立派な方です。

どんな贈り物も立派なあなたには

ふさわしくありません。

 

私があなたの足許に置く品物は私からの感謝の印

としてしかお受け取りになれないでしょう。

 

どうぞこの品をその物の価値ではなく、

私の心からの印としてお受け取りください。

最上の品物でもあなたにふさわしい、

と言えばそれはあなたの品格を傷つける

侮辱となるでしょう」

 


 

そうありました。

 

原文のままは少し難しい内容でしたが

アメリカ人は贈り物となる品物のことを述べ、

日本人は贈り物をする時の気持ちの事を

述べている。

 

要するに日本人が贈り物の際に添える

「つまらない物ですが」には

 

「あなたの人柄や私の感謝の気持ちと比べれば

差し上げる物の価値などつまらない物でしか

ありませんがお受け取りください」

 

という意味が含まれていて、贈り物をする

その時の心に価値を置いた言葉なんだと

知ることができました。

 

決して遠まわしに謙った言葉ではなく、

本来日本人が持っていた謙虚さが見える

とても美しい言葉です。

 

日本もアメリカも表現の違いはあっても

どちらも相手への配慮が言葉になっています。

 

まずは相手を敬う気持ちが大切であることに

変わりはないのに一方的な情報に左右されて

「つまらない物ですが」

という言葉を使っただけで礼儀を知らない人だ

と評価してしまうのはとても残念なことです。